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愉快な鏡花 [book]

夜叉ヶ池・天守物語

夜叉ヶ池・天守物語


歌舞伎座七月大歌舞伎を通しで見た(7/25)。
泉鏡花の戯曲「夜叉ヶ池」「海神別荘」「山吹」「天守物語」の鏡花強化月間である。

鏡花は喜劇として受け入れられうるものなのだなあと。黙読で文字だけを追いかけているとわからない感覚だった。鏡花は難しい、という喉のつかえが、するすると下っていくような心持ちだった。今回の玉三郎の演出がたまたまそちらの方向性、面白可笑しく、声を立てて笑えたりもする鏡花、を指向していた、ということもあるのかもしれない。個人的に抱いていた鏡花に対するイメージを見事に裏切られた。
だけど、玉三郎はやっぱり綺麗で、きらきらしいのに儚げで、だけど、堂々としていて余裕があって、どこかしら図太いような。想像通り、鏡花の美女そのまま、だった。

実は、歌舞伎のことも、芝居のことも、よくわかってないのだが、海老蔵の、あの空々しさってどうよ。声が良くない。若様、若侍と、青臭い、おバカさんっぽいキャラクターを演じているからだと思い込もうとしたけれど、ダメだった。なんだか宿命の恋というのが似つかわしくないのだもの。涼しくもないし爽やかでもないんだもの。「夜叉ヶ池」なんか、美術=天野喜孝の、仰々しい衣装のせいもあって、滑稽でしかないように感じられた。他の役者さんは、地に足がついているのに、ひとりだけ浮き足立ってるような印象が残ってしまった。うわすべり。

でも、鏡花は、やっぱり人外魔境だねえ。人間なんか大っ嫌いなんだ。人が人間存在と人間ではない存在に分かれていて、もちろん、人間じゃないほうがえらい。人間は醜くて駄目。人間の世間なんかつまらない、取るに足らない。人でないものは崇高で美しい。たとえそれが人間には見えなかろうが理解されなかろうが恐れられようが。そして、恋こそがもっとも美しくて、尊くて、大切。凄まじいまでの人間嫌いと、人と人、心と心が、お互いを恋焦がれる、その瞬間の怖いぐらいの衝動の破壊力。その組み合わせは、本来ならば、笑いを取れるはずがないものなのであるが……うーん。だって、そんな極端で過激な思想は、流麗な狂言綺語に仕込まれた、本気の毒であるはず。しかし、文語体のセリフそのままで、現代においても今なお笑いが取れてしまうのも、また、鏡花の言葉の妙、なのかもしれないな、とか。

歌舞伎座ホームページ
http://www.kabuki-za.co.jp/


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コメント 7

coco030705

kimukanaさんはじめまして。私のブログにniceありがとうございました。
「鏡花強化月間」という言葉が愉快です。通しでごらんになったのですか。うらやましいです。天守物語を見たかったのですが、日帰りだったため
見られませんでした。でも人気狂言なので、関西でもやってくれるかもです。
海老蔵ね・・・。お父さんの団十郎よりは声がましのような気がしますが・・・。
泉鏡花の「高野聖」もおもしろいですね。またお邪魔します。
by coco030705 (2006-07-26 16:00) 

kimukana

coco030705さん、はじめまして。nice!&コメント、ありがとうございます。
初めての歌舞伎座で初めての通しでした。正直、疲れました…。
「天守物語」、昔から見たくて、やっと見れました。良かったですよー!
by kimukana (2006-07-27 01:29) 

Ren

TBありがとうございました☆
昨日昼の部も観てきました。「海神別荘」の海老蔵さんは衣装がマント!だし
コスプレっぽい雰囲気を感じました。天野喜孝氏の美術もいかにもでした。
いつもの歌舞伎座とは全然違う空気が漂う作品ばかりでしたが
今回の公演は泉鏡花作品を読むのとはまた違う楽しさがありました。
by Ren (2006-07-27 07:15) 

kimukana

Renさんはじめまして。TB、どうもありがとうございます。
>今回の公演は泉鏡花作品を読むのとはまた違う楽しさがありました。
同感です。美しい鏡花だけではなく、楽しい鏡花を教えてもらいました。
by kimukana (2006-07-30 12:43) 

kayo

法政大学に通う4年生のkayoと申します。
実は今、卒論で歌舞伎の『天守物語』について考察しています。
その関係でお客さんたちの観劇体験を集めているのですが、もしご迷惑でなければ、31日の日記の一部を引用させていただいけますでしょうか。
by kayo (2007-01-11 12:24) 

kayo

すみません、31日ではなく、26日でした。
by kayo (2007-01-11 12:43) 

kimukana

kayoさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
日記の一部の引用、問題ありません。
卒論、頑張ってください。
by kimukana (2007-01-12 10:06) 

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