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第8回西荻ブックマーク ::: 映画『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』上映会 [nishiogi]


■尾崎翠は負け犬なんかじゃない


尾崎翠(おさきみどり、一八九六―一九七一)は鳥取県出身の女性作家。「第七官界彷徨」は一九三三年に最初に出版された代表作です。二十三歳で上京し、傑作を執筆・発表しながらも、三十代半ばで体調を崩して鳥取に帰郷。幻の作家として埋もれたままに七十五年の生涯をひそやかに閉じました。独特の清新な作風が注目されたのは没後になってから。過去の作品が発掘された現在では、若い女性を中心に、熱狂的なファンを獲得しています。生前から狂死説が流布するなど、尾崎翠の人生は、悲惨な伝説に彩られてきました。映画『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』において描かれた、逞しく大らかな尾崎翠像は、生前を知る人々の回想から構築されたものです。従来の悲劇的なイメージから解き放たれた、まったく新しい、明るい尾崎翠の姿を、浜野佐知監督が一目で惚れ込み、尾崎翠役として指名した白石加代子が、生き生きと演じています。

映画内に登場する矢川澄子(二〇〇二年逝去)のインタビュー
「尾崎翠と稲垣足穂は、すごくハイカラなの」より
東京に出てきて、まともな結婚もしないで故郷に連れ戻される。それはやっぱり、家父長的な男たちにしてみれば、とってもミットモナイことだと思いますけれど、尾崎さん自身が考えていたことって、そんなミミッチイ次元じゃなかったと思うのね。」


■一冊の文庫本が人生を変えた


浜野佐知監督は、一九七〇年に映画監督としてデビューし、三百本を越えるピンク映画作品を作ってきました。初の一般映画として、尾崎翠作品の映画化を決意、一九九八年に『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』を自主製作で発表。同作品は、現代の女性クリエイターが過去の女性芸術家を再発見した鮮烈な映像作品として、画期的なフェミニスト表現として、国内外で高い評価を受けました。尾崎翠の実人生と作品を同時に映画化するという果敢な挑戦は、文学史に対しても、かつてない形での刺激的なカウンターとなりました。尾崎翠再評価の波、第一の尾崎翠ムーブメントは、この映画とともに展開したのです。

浜野佐知『女が映画を作るとき』(平凡社新書、二〇〇五)より
「『第七官界彷徨』の映画化を望んでいたという尾崎翠が、私に向かって手を差し伸べてくれたような気さえした。誰が何と言おうと、この作品は映画になる。私はそう信じた。」


■おもかげをわすれかねつつ

高齢者のセクシュアリティを描いた『百合祭』(二〇〇一)を経て、浜野監督は再び尾崎翠作品の映画化に取り組みました。新作である『こほろぎ嬢』は二〇〇六年九月に完成したばかり。尾崎翠の短編「歩行」「地下室アントンの一夜」「こほろぎ嬢」を連作と見なして作り上げられた《不思議の国の恋愛映画》である『こほろぎ嬢』は、二〇〇六年一〇月、鳥取県で先行ロードショー、第十九回東京国際女性映画祭参加作品として上映。『第七官界彷徨』から『こほろぎ嬢』へ。さあ、第二の尾崎翠ムーブメントが開幕しようとしています。

★西荻ブックマーク第八回は、尾崎翠再評価の原点である『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』をスクリーンで鑑賞し、浜野佐知監督のエネルギッシュな肉声を聞く、またとない機会です。なにとぞお見逃しなく。


「第七官界彷徨」あらすじ

よほど遠い過去のこと、
秋から冬にかけての短い期間を、
私は、変な家庭の一員としてすごした。
そしてそのあいだに
私はひとつの恋をしたようである。

小野町子は人間の第七官にひびくような詩を書くことを夢想する赤いちぢれ毛の女の子。兄の一助と二助、従兄弟の三五郎が生活する家に、炊事係としてやってきた。分裂心理学の研究をしている一助、植物の恋愛を実験している二助、音楽受験生の三五郎。彼等と過ごす日常の中で町子は第七官の世界をひっそりと探求し続けている。非正常心理にとらわれた人間の恋はいつも一方通行、健康な恋愛を成就させているのはどういうわけだか実験室の蘚たちだけで……


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コメント 2

sarasa

ブログにコメントをいただきありがとうございます。
尾崎翠ファンの方とめぐり合えて嬉しいです。

「こほろぎ嬢」アンコール上映の情報もありがとうございました。
ときどきお邪魔させていただきます♪
by sarasa (2007-01-24 20:51) 

kimukana

sarasaさん、はじめまして。コメント、どうもありがとうございます。
こちらこそ今後ともどうぞよろしくお願いします。
by kimukana (2007-01-31 19:16) 

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